うれいなし考

ゴタンダクニオのうれいなし考です

限界梅仕事

余震に怯え震源地と50kmと離れていない場所で生活・勤務しているまさに今、おかしいのだけど、突如そういう気持ちになって遅い梅仕事をした。

今さら保存食を作りたくなったというよりは、ここ何週間と青梅の時期を逃してしまっていて、今年は諦めるしかないか、と思っていた矢先。きっかけは缶詰などを買い足した日に手に取った氷砂糖1kg。

長期日持ちのする大量の飴、くらいに見えたのだけど、それが地震初日。明日も無事なら遅めの梅シロップを作ろう、と青果コーナーをチェックしながら決意した。調べてみるとやり方を変えれば挑戦してみてもよさそうだ。もうそういう気分になったとしか言いようがない。おれ、この戦争が終わったら梅ソーダをしこたま飲むんだ…。

 

地震後1日経って、どうやら無事だったので、だいぶ熟してしまった南高梅をなぜか2kgも買った。もうそういう勢いだったとしか言いようがない。なので氷砂糖も1袋足した。保存食用として、氷砂糖の横にあったかちわり黒糖を新しく買った。なんだか連日重い買い出しをしている筋肉痛はまだない。

 

帰り道はずっと梅の爽やかなにおいとともにあった。

 

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梅が熟してしまった場合の対策として、凍らせて作るという方法があった。余震に怯えながら丁寧に洗い、余震に怯えながら水気を取る。余震に怯えながら丁寧にへたを取り、余震に怯えながら冷凍室に放り込む。なんだか滑稽だったが、そうせずにはいられなかったのだからしょうがない。明日大地震が起きて、電気の止まった冷凍庫で何者にもなれなかった梅たちが死んでいくと思うと想像するだけで辛かった。けれど、梅シロップができる10日後くらいまでは生きているほうに賭けたのだ。できあがったとても愛おしいシロップを、家で何不自由なく暮らしつつ梅ソーダにして飲んでこましたい。ささやかな目的だけれど大真面目だった。

そういうわけでサッカー観戦はしなかったが、日本が勝利したと嬉しそうにツイートする近畿の人たちを見られたのはとてもよかった。家族のLINEでも同様だった。柄にもなく「愛しているよ」などと送信してあとはせっせとブログを書いていた。

 

梅が完全に凍ったら、煮沸消毒した保存瓶に氷砂糖と交互になるよう詰める。

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あとは毎日瓶をゴソゴソと揺らして、「汁出さないと捨てちまうよ」などと言っていじめるのだが、いじめるのはちょっと可哀そうなのでやめておく。けど発酵なんかしたりしたらほんとに困ったことになるので、やめてね、2㎏も漬けたんだし……ぶつぶつ。

 

去年青梅から作った梅シロップは、最後の瓶の半分を1年近く後になって冷蔵庫から発掘したけれど、何の問題もなく飲めた、ということが先日あった。今年は勝手が違うけれど、なんとかうまいことできあがってほしいと願う。

 

 

 保存食を作るというのは、先人の知恵を受け継いだあかしの生活であり、また繁忙な日常にあってのある種の余裕だ。生活を見直すには遅すぎるけれど、そう思うことで精神の安定をはかりつつ、これから迎えるであろう(無事に迎えることを願う)厳しい夏に向けてのお楽しみとした。